「
天童クラシックス
」に代表される製品が誕生した1950年代から
成形合板
は、デザイナーの自由なイメージや斬新なアイデアを思い通りに実現するために不可欠な技術として、天童木工とデザイナーとの強力なコラボレーションを生み出しました。その中から生まれた新しい製品、新しいデザイナーとの出会いを伝える特集を全4回にわたってお送りします。
“最小限の行為で最大の効果”このことが私のデザインの根底にあります。デザインがシンプルであればあるほどデザインの許容範囲が広がると思います。特に家具など様々な空間の中で機能を要求されるものにとって不可欠な行為であると思います。しかし、一方でシンプルに表現するということには、思慮深いメッセージとデザインの深度とそれを実現する高い技術力が要求されます。多くのデザイナーと共同製作されている天童木工と創作することによって、“
環/kan
”というアイデアがより高次な次元で昇華されるのではないかという直感がありました。それは、何よりも天童木工には、他に類をみない成形合板の高い技術力とトレンドにごまかされずデザインを大切に進化させていこうというマインドがあることにあると思います。
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この座イスは、私のデザインする和食店や旅館などで使用するために考えました。ほとんどの座イスは、畳の上で座布団と対になって背中を支えるようになっているため、必然的に畳を意識したものになり、正座やあぐらといったものの延長線上にあります。しかしこの「環」は、発想の過程がまったく逆で、まずイスに座るポジションがあって、それを低くしていくことで水平方向に広がる日本的な空間に違和感なく溶け込むようにしています。座布団より少し座面が高いことで長時間座っていても疲れにくい、あぐらをかくことが苦手な人でも足が痛くならない、座りやすくて立ちやすい、などの利点が生まれます。また、従来の座イスを使うときに脇息というセパレートの肘掛けを使うことがありますが、「環」では肘掛けを背中をホールドする部材と一体となったデザインで設けています。 この背中から肘掛けを一体にしている成形合板のループが“環”の名前の由来でもあり、特徴でもあります。一枚の積層合板からくり貫かれた輪を立体的に立ち上げ、単純なループがイスとしての機能を与えています。
(商店建築社発行:月刊商店建築 2006年-8月号より)
辻村氏がこの座イスをコーディネートした「匠奥村」についてこう話しています。“匠奥村”は京都の祇園にあり、古くからお茶屋を営んできた伝統的な京都の町屋をリノベーションしてフレンチレストランにするというプロジェクトです。その建築が建てられた時代背景とその美意識を尊重しながら、これからの時代の新しい伝統となるよう、保存を主とする再生をするのではなく進化を主とする動態保存をコンセプトにしました。“環/kan”は、このような匠奥村の空間において伝統の軸線上のモダンデザインを象徴しています。
私のデザイン活動の中には、様々なデザインユニットとのコラボレーションがあります。
SOU・SOU
のプロジェクトもそのひとつです。SOU・SOUでは、様々な地場産業とのコラボレーションによって新しい伝統産業のあり方を通して新しい生活提案しています。東京デザイナーズウィークで発表された『LOVE』というテーマの“環/kan”は毛氈を大胆なデザインで絞りにかけたファブリックを張り込み、有松鳴海絞りの伝統的な技術の新しいあり方を提案しています。
今後も、天童木工と辻村久信氏のものづくりにご注目ください。